昨今話題の、老後資金2000万円不足問題について。新聞一面に取り上げられていたかと思えば、NHKをはじめTVやネットニュースでも多くの記事が出ていますね。TVやラジオの街頭インタビューなんかでは「2000万円なんかあるわけないじゃん」「国に何とかしてほしい」「そんなことは、わかっていた」などという意見が言われています。

人生100年時代の蓄えは? 年代別心構え、国が指針案…朝日新聞

さらに、複雑にしているのは、7月の参議院選挙を前にして、政治家の皆さんが有権者の皆さんから「2000万円ないけれどどうしたらいいんだー」という意見があがってきて、挙げ句の果てには麻生さんが、報告書は受け取らない。という発表をしたがために、火に大量の油を注いだような状況になっております。

年金への根強い不安露呈 「老後2000万円」報告書撤回…日本経済新聞

さて、では、ここまで世の中を騒がせている当の報告書には何とかかれていたのでしょうか?

【実名告白】当事者が明かす「老後2000万円不足」の真実…NewsPicks

朝日新聞がそこだけ切り取らなければ、誰も注目しなかったと思います。これは明らかにメディアの報道の仕方が意図的です。これ使えるな、政局になるって思ったんでしょう? おそらく。引用:【実名告白】当事者が明かす「老後2000万円不足」の真実 - NewsPicks

はい。


では、実際の報告書をみてみましょう。


問題の文章は21枚目にあります。

夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。それを考え始めた時期が現役期であれば、後で述べる長期・積立・分散投資による資産形成の検討を、リタイヤ期前後であれば、自身の就労状況の見込みや保有している金融資産や退職金などを踏まえて後の資産管理をどう行っていくかなど、生涯に亘る計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要である。引用:『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』


この「2000万円問題」は、数字だけが一人歩きしていますが、2000万円必要なのは厚生年金で月20万円を受給して、毎月25万円を支出する夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦が無職で20年~30年、年金だけを受け取って生活する場合の想定ですね。

60歳で退職したあとも、再雇用やパートなどで仕事をされている方は多くいらっしゃいます。夫婦共働きも結構ありますよね。フルタイムでなくても有償で働いている方は多いですよね。田舎の経済や社会なんか、こういう皆さんでまわっているようなもんです。みなさんが元気で現役だからこそ、地域社会が維持していけるわけです。それこそ、これから、日本全体が高齢化して、いわゆる団塊の世代が2025年には75歳になり、団塊ジュニア世代が60歳になるのは、時間の問題というか、あと十数年の話のわけです。それこそ、みんな働いていなければ世の中回らない。本題から反れました。

2000万円問題の本質は、年金が崩壊するわけではない。そもそも、年金崩壊したら2000万円どころでなく、老後夫婦1億円ないと生活できませんからね。

年間300万円×65歳~100歳の35年間=1億500万円

「年金が100年安心」と言われたのは、100年後も年金の運用は続いているだろうということで、年金だけで豊かな老後がすごせることを保証するモノではない。

問題は「人生100年時代」ですよね。昔よりも、みんな長生きするようになった。2015年の試算で60歳の人が95歳まで生きる割合は25%程度だそうです。

日本人は年々長寿化している。1950 年頃の男 性の平均寿命は約 60 歳であったが、現在は約 81 歳まで伸びている。現在 60 歳の人の約4分の1が 95 歳まで生きるという試算もあり、まさに「人 生 100 年時代」を迎えようとしていることが統計からも確認できる。 引用:『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』

いま60歳の人の4人に1人が95歳まで生きるわけです。そうなると、その分必要なのはお金ですよね。子供たちと同居してお金の心配なく生きていければまだしも、高齢夫婦2人暮らし、独居暮らし、老人ホーム暮らしも、当たり前の世の中、95歳まで働きに出ているのは非常に珍しいですし、なにより健康であるとは限らない。ガンなどの病気だけじゃなく“認知症”という、大きな問題があります。認知症になると収入だけではなく、生活そのものに影響が出てきますが、なにはともあれ、お金が必要。だから、若いときから将来に向けての長期的な資産運用をして、老後は計画的に資金を取り崩しましょうねと報告書には書かれているわけです。

ライフスタイルが多様化する中では、個々人のニーズは様々で あり、大学卒業、新卒採用、結婚・出産、住宅購入、定年まで一つの会社に 勤め上げ、退職後は退職金と年金で収入を賄い、三世帯同居で老後生活を営 む、というこれまでの標準的なライフプランというものは多くの者にとって 今後はほとんどあてはまらないかもしれない。今後は自らがどのようなライ フプランを想定するのか、そのライフプランに伴う収支や資産はどの程度に なるのか、個々人は自分自身の状況を「見える化」した上で対応を考えてい く必要があるといえる。 引用:『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』

長生きする人が多くなったから、かつてよりお金が必要になります。長期的な資産運用をして老後に備えましょう。です。が、しかし、これって、みんなわかってるでしょ。隠す隠さないじゃなくて、みんなわかっているし、定年退職したあとも、働きに出ている人たくさんいるじゃん。そういうの、もはや当たり前だし、適度に働いていた方が本人にとっても社会にとっても、良いわけですよ。ただ、いつまでも働ける訳じゃないし、認知症になるかもしれないから、備えはしっかりしようねと言うわけですよ。それに、“豊かな老後生活”をするには2000万円不足するかもしれないけれど、質素でも足る生活をされている方もたくさんいるわけですよ。

長寿化と認知症の人の増加を踏まえると、今後は認知症の 人はもはや決して例外的存在ではなく、認知・判断能力の低下は誰にでも起 こりうると認識すべきであるといえる。現状では、認知・判断能力が低下し、 本人による意思能力が不十分となった場合、また、そのように判断された場 合には日常生活を送るにあたって様々な制約を受けることになる。これを出 来る限り回避するための事前の備えや適切な対応の重要性が増していくも のと考えられる。引用:『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』

とって出てきた、2000万円問題。いや、みんな老後にお金が必要だろうと言うことは知っていただろうし、足りない人はなんとか働いたりしているわけで、長期的な資産運用しながら将来に備えましょうって、報告書に書かれているのよ。

長寿化が進む中、資産形成・管理において、資産寿命を延ばす観点から、 広く国民が知っておくことが望ましい事項があると考えられる。引用:『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』


いや、なんだろう、これは選挙の争点としてではなく、広く国民に将来に向けて計画を立てていきましょうという提言書みたいなもので、もしこれを選挙の“道具”にすると、極論一人当り2000万円追加で徴収しましょうみたいな話になったりするんでしょうか?

なんかバカにされているような感じなんだよな。



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