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リアルタイムでは知らない。なにせ50年前のこと。教科書にもちょろっと載っていたかどうか、TVでもいまではそれほど扱われない1960年代後半の学生運動。その中でも、一度は聞いたことがある「東大全共闘」

小説家としてだけではなく、何度も自衛隊に体験入隊して、自ら「楯の会」という民間防衛組織を創設して1970年45歳で市ヶ谷の駐屯地で演説の末、自壊した「三島由紀夫」

反体制の左翼。革命を起こそうとしていた学生たちと、ノーベル文学賞候補でありながら右翼派で過激な思想家の三島由紀夫との伝説と言われる討論会のドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘』



三島由紀夫の小説は何冊か読んだことがある。


ちょっと難しいけどおもしろい。そんな本だった。

三島由紀夫は東大法学部卒業。東大在学中に終戦を迎える。卒業後は大蔵省に就職するが本格的に小説家となるためにすぐに辞め、川端康成と日本人初のノーベル文学賞を争うまでに世界中にファンを持つ人気作家となる。その一方で、自衛隊になんども体験入隊している。また、武力を厭わない過激な思考で国家について語る政治活動家でもあった。


篠山紀信撮影の三島由紀夫の写真は圧巻やった。


映画を視て思ったことは、三島由紀夫が自決せず生きていたらどんな日本になっていただろうかということだ。ただ、東大在学中に終戦を迎え、同胞が天皇の名のもとに死んでいったにも関わらず三島自身は戦死することもなく生きている。そして、そんな過去のことは忘れていく社会で三島は苦しんでいたんじゃないかと。

東大全共闘は東大駒場の大講堂に1000人を集め、そこに三島は丸腰で1000人の学生を説得するために出向いた。

1000人の言わば、自分のことを政敵と思っていて暴力も辞さない全共闘学生を前にして、討論を戦わせる。はじまる前には、とてつもない緊張感があったようだが、はじまってみると三島のユーモアのある話で時より場が和む。学生たちを罵倒したりするのではなく、説得するために来たのだと。

なんというかな、ふつーさ、ある程度偉くなったり、有名になると自分を守ったりするじゃん。そうじゃないんだよ。何をするかわからない、もしかしたら殺されるかもしれない、敵地の1000人の前に丸腰で出向いて、ユーモアを効かせながら討論して、笑顔で帰っていくのだ。めちゃくちゃカッコいいやん。