“世界で話題”、でも、“日本ではそれほど取り上げられていない”、中国新疆ウイグル自治区での現実をご存知ですか?

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「新疆ウイグル自治区」は、中国の6分の1の面積があり「一帯一路」の要。中国と中央アジア、中東、ロシア、モンゴルなどとも接する国境地域。成り立ちは複雑だが、ウイグル人は遊牧民でイスラム教徒、「東トルキスタン」と呼ばれる現在の「ウイグル自治区」に昔から暮らしていた。

70年程前、ソ連のスターリンと中国の毛沢東の“密約”とかで、現「ウイグル自治区」は中国になり、以降、漢族に支配されてきた。

地下資源が豊富だが、利権も仕事も漢族が行っている。ウイグル人は顔も文化も生活も違うため、中国国内で差別や迫害を受けてきた歴史がある。その過程で、イスラム原理主義のタリバンなどがウイグル自治区入り、ウイグル人による中国共産党に対する、テロ行為などが行われたこともある。

習近平主席就任後にウイグル自治区を訪れた際、暗殺未遂事件とも言われる爆破事件が起きた。その結果、習近平は“徹底的”なウイグル人迫害を行った。

イスラム原理主義の影響を受けたウイグル人はごく一部であり、なおかつ、その根幹にあるのは、貧しさである。自分たちの土地で採れる資源の恩恵を受けることもなく、虐げられるだけ。文化も伝統も、中華民族統一の過程で奪われていく。貧しさによる農民蜂起は中国では時々ある。けど、ウイグル人による事件は特別視され、そして、ウイグル人は迫害を受けている。

ウイグル自治区には中国国内で最も多くの顔認識ができる監視カメラが設置されている。中国にある監視カメラは国民の2人に1台とのことだが、圧倒的にウイグル自治区に設置されている。個人のスマートフォンにはGPSや通信履歴をSNSの投稿やメッセージのやり取りが監視できるアプリの登録が義務付けられている。ウイグル人が漢族に逆らうことや、政府の意向に沿わないようなことを行えば「強制収容所」に連れて行かれる。強制収容されている人は100万人〜200万人とも言われ、拷問、処刑などもされているとのこと。

中国では以前、死刑囚からの臓器移植が認められていた。現在では法的には禁止のようだが、かつては、賄賂をもらった判事が、死刑になるような罪ではない人にも死刑判決をしていたこともあったようだ。そして、現在では収容所近くに移植できる病院などができたり、中東の富裕層が移植手術を受けに来ているとの話もある。ウイグルではある日、子供が突然いなくなり、帰ってくると臓器が一つないこともよくあるらしい。そして、ある日突然、人が消えることがよくあるらしい。

ウイグル自治区は中国共産党に忠実で、清く正しい人々ばかりで、ゴミも落ちていなければ、スリもない。財布を落としても拾ってもらえる。しかし、相対的に若い男性は少なく、人々に笑顔もない。そんな暗黒社会が、日本から海を隔てた隣の国にあるのだ。





著者は福島香織さんという、新聞記者出身で中国での経験豊富なフリージャーナリスト。さすが、元新聞記者の方だけあって、文章が読みやすい。出版は2年前だが、ウイグル自治区の問題は改善はされていないだろ。

米中対立の狭間で「ウイグル問題」は、大きな争点。米国や英国は中国をジェノサイド(大量虐殺)に認定した。G7でも団結する方向。が、日本は政府として中国の人権問題は国会採決断念されている。

「ウイグル」の問題は、一見わかりにくて、複雑で、なんだか、日本に暮らしている僕達にとって、遠い国のような話のような気もするが、そんなことない。21世紀最悪の民族迫害、人権侵害が隣の国で起きている。そして、その国で半年後に冬季五輪が予定されている。こんなん、東京五輪をやるか、やらないかの比でもないし、森さん辞めされるかどうかで揉めている比でもない。どう考えたって、そんな国で平和の祭典なんてできやしないし、習近平主席が「オリンピック開会宣言」をするべきじゃない。

北京冬季五輪が仮に終了後には、ロシアがソチ五輪後にクリミア半島を併合したように、香港、チベット、ウイグル、内モンゴル、そして台湾、尖閣を取りに来るのも時間の問題ではないか。

台湾の向こうには、沖縄だってある。

米中対立で、アメリカだって、中国だって、本当にどっちが正しいとか言い切れない。けど、僕らは、いまはアメリカについていくいしかない。中国に監視、支配されて、選挙のない、民主主義も資本主義も否定された世界で生きていけないでしょ。

なんか、いろいろ考えさせられる本でした。


※ウイグル自治区での人権問題は一部でフェイクニュースとされています。特に中国国内では、そんな人権問題は存在しないとの世論が強いようです。僕もウイグル自治区の実態を直接確認したわけではないですが、中国国内での捉え方と、欧米諸国の捉え方には大きく隔たりがあるようです。