2022年の本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』をAudibleで聴きました。Amazonでポチっていたら、読み切るのに数ヶ月を要していたかもしれないけれど、Audibleならドライブしながらでも倍速再生できるので、その気になれば早いものです。

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同志少女よ、敵を撃て
逢坂 冬馬
2021-11-17




発売が2021年11月。数カ月後にウクライナ戦争がはじまるわけですが、戦争がはじまったことで、この作品の注目度がより高まる結果になっと思う。僕もそのひとり。

第2次世界大戦について、教科書をはじめ、多くのTV番組でも、新聞の紙面でも取り上げられるのは「太平洋戦争」。日本人の僕たちにとって、第二次世界大戦は、ほぼ「太平洋戦争」と同意義。一方、ヨーロッパでは、そこはそこで戦争していた。なかでも「独ソ戦」は第二次世界大戦最大の激戦であり、その舞台となった「スターリングラード」は先の大戦最大の激戦地。日本の太平洋戦争による戦死者は300万人と言われるなかで、ソ連の「大祖国戦争」と呼ばれる第二次世界大戦の犠牲者は2700万人。スターリングラードでは、ドイツ軍の犠牲者が65万人、ソ連軍は120万人といわれる。60万人いた市民は1万人以下となった。これだけの、激戦となった都市を舞台として、当時の戦地を史実をもとにして“女性目線”で描いたフィクションが【同志少女よ、敵を撃て】である。

日々、戦争映像を報道などで目にしていると、この小説に描かれている描写がリアルな感覚をもって感じられる。

多くの戦争に関する、映画や小説、ドキュメンタリーは男性について。「戦争は女の顔をしていない」とは言われるけれども、実戦で戦う女性は多くない。少なくとも日本では、戦争に行くのは若い男性で、自ら戦地に赴くことはなかった。一方で、ソ連だけは、女性でも狙撃手となり、最前線で戦った。もとは、動物すら撃てなかった少女が最前線で敵兵を撃っていく。そして、それを自慢しはじめるのだ。

流石の本屋大賞受賞作だなぁと思う。戦争がなければ、それぞれの祖国でごく平凡な日常を過ごしていた人たちが、最前線に立ち、憎しみ合い、殺し合うのだ。それそれに、物語があり、一方では、憎しみの対象でしかない相手にもその人の人生がある。戦争がおきなければ、結婚していたかもしれない相手に対してのクライマックスが印象的。「同志少女よ、敵を撃て」

倍速で聴いているのでかもしれないけど、次々と物語が展開されていくので、どんどん先が聞きたくなる。

聴き応えがあって、いまのウクライナ戦争について理解する一端をうかがうことができる小説です。