農業協同組合という「JA(農協)」。日本全国どこにでもあり田舎での存在感は絶大。あなたの身近にもきっとある、あの「JA(農協)」。1000万人以上の組合員を抱え、共済(保険)の日本最大級の加入者がいる。そんな「JA(農協)」の「闇」を暴いている。


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農協の闇 (講談社現代新書)
窪田新之助
2022-08-17



著者の窪田さんは元日本農業新聞社の記者。農業新聞には、馴染みのある人もない人もいると思う。昔、大学に置いてあったな〜、おじいちゃん読んでたなぁ〜との思い出やら、新聞屋さんが、“あそこは、農協で働いているから農業新聞とってるんだよね〜”みたいな話がある農業新聞だ。一部では“農協新聞”とも呼ばれているらしい。農協の職員?幹部?は購読することが求められるんだとか。あ、それで窪田さんは和歌山でおきた梅の価格カルテルをめぐり農協新聞で取り上げたら、クレームが入って…。そのクレームを入れた人が、いま全農の会長なんだとか。

「JA(農協)」は「共済(保険)」でもっていると言われてる。“農業協同組合”とは名ばかりで、“農業”事業より、“金融”で売上をあげている実態がある。

「共済(保険)」で、職員にはノルマのようなものがあり、それが達成できないければ「自爆」する必要がある。しかも、それで結構な人が自爆していて、共済をかけるために仕事しているような人もいるらしい。

加えて、共済の他にも、通販やら雑誌も購入や購読が求められている。

その結果起きるのが、組織的な不正。

数年前に「かんぽ生命保険」であった不正が「JA(農協)」にもあるらしい。

そもそも「生保」と「損保」を同じ人が販売しているところが他にはない。なぜなら、それだけ専門性が求められるから。けど「JA(農協)」の場合は、LA(ライフアドバイザー)でなくても保険の販売をしなければいけないし、LAでも研修が少ないらしい。さらに、共済以外の民間保険は取り扱ってもいいけど、販売していない(ごく一部をのぞき)。

過度のノルマの結果、なんとか「JA(農協)」という組織は維持されている。が、そもそも「農業協同組合」である以上、組合員のための組織でなければいけない。しかし、それが本当に実現できているかは疑問。

地方の人口は減少が続いている、農家の数はもちろん減っているし、新規就農者は農協から離れつつある。いまの「JA(農協)」を維持するのは、いま以上に厳しくなるし、そのぶんだけ職員の負担が大きくなるのは必然。が、それを自ら改革することが巨大組織には難しそうだ。

個別の事例を取材して「JA(農協)」の闇を暴いている本だった。“JA=闇”ではないと言っているが、本来の目的から離れていく巨大組織の一端がうかがわえた。

「JA(農協)」は、地方の地域にとっては、インフラでありライフラインでもある。そうだからこそ「JA(農協)」は地域の組合員のため、職員のための組織であってほしいと思う。